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リサーチハイライト

Vol.7, July 2016

ナノマシン造影剤でがんのMRIイメージングが向上

MRIスキャンでは内臓器官をより鮮明に映し出すために、しばしば造影剤が使われる。造影剤は、MRIでの磁気刺激後に水分子が平衡状態へ戻るのを助ける。言い換えるなら、造影剤は水プロトンの緩和時間を短縮し、最終画像の質を高める。

固形がん性腫瘍のイメージング向上に対する関心が高まる中、研究者らはナノマシン造影剤を腫瘍へと送り込む可能性を模索してきた。今回、川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンターのPeng Miと国内の研究者らにより、固形腫瘍内のpH変化に応答して磁気共鳴信号を増幅するナノマシン造影剤が開発された。

研究チームは、ナノマシン送達システムで2つの主要な目標を設定した。まず、腫瘍到達後の造影剤放出である。固形がん内のpHは、周辺の身体部位のpHより低い。したがって、同チームは、特定のpH環境に応答して溶解する、pH感受性のリン酸カルシウムナノ粒子をデザインした。次に、腫瘍内への放出後に信号増幅を生じる分子を内包することである。そのため、同チームはナノ粒子にマンガンイオン(Mn2+)を搭載した。

マウスを対象とした試験では、緩和信号の増幅により、組織および腫瘍が鮮明かつ高解像度で映し出された。ナノマシン造影剤投与後1時間以内に、マウス肝臓中のミリメートルサイズの腫瘍および血管のイメージングができた。これにより、既存のMRI造影剤と比較して大幅に高い感度が示された。腫瘍へと進行する前の小さな転移病変をイメージングできる能力は、がんのより早期での発見を可能にし、患者の生存可能性の向上をもたらす。

研究チームは、今回開発されたナノマシン造影剤が、臨床での体内腫瘍内低酸素領域(悪性および潜在的転移の兆候)検出に役立つことを期待している。また、新しいナノマシン造影剤は、非侵襲的に解剖学的詳細を可視化できる。これも当該領域における重要な前進である。

Reference and affiliations

P. Mi1,2,3, D. Kokuryo4, H. Cabral2, H. Wu2, Y. Terada5, T. Saga4, I. Aoki4, N. Nishiyama1,3& K. Kataoka2,3,6,7.A pH-activatable nanoparticle with signal-amplification capabilities for non-invasive imaging of tumour malignancy. Nature Nanotechnology Published online 16 May 2016

  1. Laboratory for Chemistry and Life Science, Institute of Innovative Research, Tokyo Institute of Technology, R1-11, 4259 Nagatsuta, Midori-ku, Yokohama 226-8503, Japan.
  2. Department of Bioengineering, Graduate School of Engineering, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8656, Japan.
  3. Innovation Center of Nanomedicine (iCONM), Kawasaki Institute of Industry Promotion, 3-25-14 Tonomachi, Kawasaki-ku, Kawasaki 210-0821, Japan.
  4. National Institute of Radiological Sciences, Japan Agency for Quantum and Radiological Science and Technology, Anagawa 4-9-1, Inage, Chiba 263-8555, Japan.
  5. SPring 8, JASRI, 1-1-1 Kouto, Sayo-cho, Sayo-gun, Hyogo 679-5198, Japan.
  6. Department of Materials Engineering, Graduate School of Engineering, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8656, Japan.
  7. Center for Disease Biology and Integrative Medicine, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan.
  8. Correspondence: aoki@nirs.go.jp ; nishiyama.n.ad@m.titech.ac.jp ; kataoka@bmw.t.u-tokyo.ac.jp

Suggested image: (Fig 1a from paper or request a similar graphic from the authors)

Figure:

日本各地の研究者によって、MRI画像の向上を実現する画期的なナノマシン造影剤が開発された。ナノマシン造影剤により、体内のミリメートルサイズのがん性腫瘍および病変を鮮明かつ高解像度で映し出すことができる。