2015.04.30
ナノ医療イノベーションセンター長の東京大学 片岡教授らが、 ナノマシン実用化に向けた研究論文を発表
全身投与によってリンパ節転移を標的する高分子ミセル型ナノキャリア
~QOL向上を実現する革新的な治療法~
リンパ節転移は、既存の治療法では根治が極めて困難である悪性腫瘍のひとつである。 また、リンパ節転移に対して効率よく薬剤を届ける方法はこれまで見出されていない。
今回、東京大学大学院工学系研究科(医学系研究科兼務)の片岡一則教授らの研究グループは、白金制がん剤を内包した高分子ミセル型ナノキャリアの粒径を50nm以下に制御することによって、全身投与にてリンパ節転移を治療できるドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発に成功した。 研究では白金制がん剤を内包した粒径30nm、70nmのナノキャリア、臨床的に用いられている粒径80nmのドキシル®(ドキソルビシン内包リポソーム)を比較検討した。 その結果、粒径30nmのナノキャリアのみが有意にリンパ節転移巣内の血管を透過し、さらに転移巣の深部へ浸透することが判明した。 この発見は、リンパ節転移を治療するナノDDSの設計にサイズ制御の要素が重要であることを示した初めての例である。 これらの知見がリンパ節転移に対する保存療法の発展に役立つことが期待される。
なお、当研究成果はACS Nano(オンライン発行2015年4月16日)に掲載されました。