ビデオ特集
Vol.2, December 2014
秦順一氏
公益財団法人実験動物中央研究所
所長・理事 医学博士
実験動物中央研究所は、神奈川県川崎市にある殿町国際戦略拠点キング スカイフロントの中心に位置します。
背景
私の研究テーマは小児がんです。実験動物中央研究所(実中研)との関わりは、実中研の創業者である野村達次博士が広く日本に普及させてヌードマウスという実験動物を使い始めた頃に遡ります。このマウスは胸腺を欠くため、免疫機能が働きません。したがってさまざまな細胞を移植することができます。われわれはヌードマウスに小児がんを移植し、生体におけるがん細胞増殖・分化などのの性格を調べました。
私が実中研の所長に就任したのは、実験動物を通じて医学・医療の発展させ、病める人たちからその苦痛を一刻も早く取り除きたいと考えたからです。
実験動物の種類と使用
実中研の研究部門は大きく分けて2つの部門があります。一方は、ヒトの臓器の機能の解明や疾患モデルとなる遺伝子組み換えマウスを作製する部門です。もう一方の部門は、ヒトの中枢神経系の機能の解明やヒトの難治性神経疾患のモデルを作成するために、小型霊長類のマーモセットを使った研究に焦点を合わせています。霊長類では今まで遺伝子改変に成功していませんでしたが、実中研ではマーモセットを使ってそれに成功しました。
科学誌Natureに論文を発表(2009年)
2009年、科学誌Natureに遺伝子組み換えマーモセットに関する研究論文を発表しました。同研究では、マーモセット受精卵に由来する胚性幹細胞(ES細胞)に、緑色蛍光たんぱく質(GFP)をコードする遺伝子を導入し、GFPを発現した胎仔を得ることに成功したのです。。この研究によって、遺伝子組み換え技術がマーモセットでも使用できることが示されました。これらの結果は、パーキンソン病や認知症といった神経難病の動物モデル作製に飛躍的な進歩をもたらすと思われます。また、免疫不全マーモセットの作製により、マーモセットの体内で「ヒトの環境」を創り出すことも可能になります。
現在の研究
現在、取り組んでいるのは脊髄損傷を再生医療で治療する研究です。毎年数千人もの人(合計では10数万人)が、事故や疾患により脊髄を損傷し、車椅子の生活を強いられます。慶應義塾大学医学部の岡野栄之教授と共同で、iPS細胞から神経幹細胞に分化させ、それを実験的に脊髄損傷を来したマーモセットに移植し、不随になった運動の改善を証明しました。臨床研究へ進めることを目指しています。
実中研は、脳機能を生かしたまま観察できるMRIシステムを備えています。MRI技術を使うことで、マウスなどのげっ歯類、マーモセットの神経ネットワークの機能を視覚化することが可能になります。
現在の研究
今後
われわれは、今まで築き上げた研究成果や新しい技術を次世代の研究者に伝える使命を担っています。そのために、実中研は積極的に教育機関との連携を図り、大学院生や若い研究者が研究に携わる機会を提供しています。今後も魅力ある研究を行い、医生物学の研究を目指す若い研究者の養成に努めたいと思っています。
対岸に羽田空港(東京国際空港)を臨む
実中研のあるキング スカイフロントは、羽田空港の目の前に位置します。アジアのハブ空港として、羽田に就航する国際線キャリアも増加しています。キング スカイフロントは、実中研の研究と事業をグローバル規模へ広げる絶好の場所であると考えています。