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Vol.17,November 2019

戸須眞理子氏

株式会社ブレイゾン・セラピューティクス 代表取締役社長 薬学博士

1.設立の背景、事業内容と目的

私たちBraizon Therapeuticsは、脳に薬を届けようという、いわゆる薬物送達技術を開発している会社です。この技術は、東京大学の教授で今はナノ医療イノベーションセンター長である片岡一則先生と、 東京医科歯科大学の神経内科のメディカルドクターである横田隆徳先生、この二人の医工連携の研究成果を社会実装化しています。

脳はなかなか薬を通さないんですね。これは脳が持っている血液脳関門という生体バリアによって、脳は不要なものは通さない、でも自分に必要なものは通す、というメカニズムを持っています。

この不要なものを通さないというメカニズムにより、中枢神経系の薬の開発は難しいのですが、この 問題を解決しようという研究の成果です。この研究成果を社会実装化するという目的でこの会社が設立されました。

2.事業・研究の特徴

先程、脳には自分の必要なものを通す、というメカニズムがあると言いました。脳が、大きなエネルギー源になるグルコースを取る、というメカニズムに関わる、『グルコーストランスポーター1』(GLUT1)という分子があります。
この分子を使って薬を届けよう、というときに、グルコースで覆わなければいけない、グルコースを薬にくっつけなければいけない、といった問題があります。

ナノパーティクルという小さな分子を作り、この分子の中に薬を入れます。そしてこの薬の入ったナノパーティクルの表面をグルコースで覆います。そうすると、グルコースに修飾された、その薬が入ったナノパーティクルが、先程言ったグルコーストランスポーター1というのを介して脳に運ばれていく、そういうメカニズムです。

血液脳関門を通る薬は、今までは0.1%ぐらいと、わずかしか通っていませんでしたが、われわれの技術を使うと、約6%達成します。これは、今、世界中でも最も脳に送達している達成率になります。

もう一つは、このナノパーティクルという非常に小さな カプセルを使うので、どんな薬物も入れることができます。低分子化合物や、これからの医薬品として注目されている抗体医薬や、核酸医薬や、ペプチドなど、いろいろな分子をこのパーティクルの中に入れることができます。

われわれの技術の大きな特徴というのは、パーティクルを投与するときにファスティング、つまり空腹時に投与します。健康診断の時に「ご飯を食べないで」というのと同じです。一晩空腹にして、そこでこのナノパーティクルを投与します。すると、そのあとご飯を食べてグルコースを供与する、グルコースを投与することによって、血糖が上がってきて、それと一緒にパーティクルが脳に入ってきます。

他の臓器もグルコースが必要なので、肝臓、心臓など様々な臓器に送るグルコーストランスポーターが存在しますが、この血糖のコントロールによってナノパーティクルが集積していくのは、脳にだけ見られる現象です。そういう意味において、脳に特異的に薬を届けることができるという大きな特徴があります。

3.事業・研究の進展状況

われわれ自身が薬を開発しているわけではありません。我々のクライアントは、脳に届けたい薬を持っている製薬会社です。良い薬はできたけれども、なかなか脳に届かない、脳に届けることが大きな課題になっている、そういう製薬メーカーに、われわれの技術を提供して、共同開発をして新しい薬を作る、というコラボレーションです。国内外で4社ぐらいの製薬会社と、既に共同研究をスタートしています。

これがまずは私たちの主幹のビジネスモデルになりますが、私たち自身も薬を作りたいと思っています。

ナノパーティクルの形にしますので、薬自体は既存の薬でも、その中に入れると新しい薬になります。この化学療法剤が脳に行けば効くのに、というような場合に、これをミセル化して、脳に届けて、という方法も考えられると思います。

それからもう一つは、全く新しいものです。これから高齢化に向かうと、神経変性疾患、アルツハイマー、パーキンソン病、ハンチントンなどの患者さんが増えていきます。研究者の 方々は新しい薬を研究してらっしゃいますが、そういうアカデミアのシーズをスカウンティング(scouting)してきて、 われわれの技術とコンバイン(combine) することによって、より効果的な薬を開発していきたいと考えています。

4.将来の展望

どんな会社になりたいですか?とよく聞かれます。
われわれはインテルになりたいと言っています。脳中枢神経分野のインテルになりたいと。なぜかというと、 私たちはプラットホームに強い会社です。世界中の製薬会社から上市される中枢神経系の脳疾患の薬の箱の上に、「インテルインサイド」のように、全ての(中枢神経系の脳疾患の)薬にわれわれの技術が入っているよ、と言うシールが貼ってある、そういう会社になりたいと思っています。

今、私たちは創薬というところにフォーカスをしていますが、これから先、脳の病態だけではなく、脳の発達や 機能の部分が解明されていって、物質レベルまで解明されたとき、『別に病気ではないがこの物質を脳に届ければ何かが予防ができる』とか、『より改善ができる』『より健康になる』という物質が出てくる可能性があります。たとえそれが30年後40年後でも、血液脳関門は無くなりません。ひょっとしたら将来、我々の技術は、薬だけではなく、そのような技術にも役に立つのではないかなと思っています。

5.キングスカイフロントに期待すること

このキングスカイフロントというエリアは、いろんな施設が集積しており、とくに私たちが入らせて頂いているナノ医療イノベーションセンターは、ベンチャーのインキュベーションでもあり、世界的なナノ医療のメッカ的な研究施設でもあります。その点がわれわれの大きなメリットです。

私たちは今、ボストンにラボを持っています。ご存じの通りボストンというのは、ベンチャーのエコシステムが発達していて良い環境があります。そこでは、研究者・研究所のネットワーキングだけでなく、ビジネスのマッチングやベンチャーキャピタルとのマッチングなどが大きな ダイナミクスのもとで動いています。

キングスカイフロントは、様々な大きな会社が来ますし、ベンチャーもいる、そんな環境で、ネットワーキング、マッチング、そして、正直を言うと、いかにお金を呼び込めるか、ということがとても大事だと思います。 資金調達にメリットがあること、そしてキングスカイフロントに入れることが ステータスになる、と言える環境作りを、キングスカイフロントに期待します。

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