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舛屋圭一氏

バックグラウンド

 東京大学大学院教授の菅裕明教授が発見した、アミノ酸から特殊なペプチド(決まった順番で様々なアミノ酸がつながってできた分子の系統群)を自由に作り出せる技術をもとに、ペプチドリームという会社が生まれました。

 その技術の総称を、創薬開発プラットフォームシステム(PDPS:Peptide Discovery Platform System)といいます。

 この技術を持っていることによって、今まで作り出せなかった様々なペプチドを、アミノ酸から簡単に作り出すことができます。

 何十兆とか、何京とか、数えられないくらいのペプチドを瞬時に作って、そこから新薬につながる薬の素を見つけ出していくという技術です。

共同研究の相手方がクライアント

 この技術をもとに、私たちの会社は今現在、世界全体で12社の大手製薬会社と共同研究開発という形で契約を結び、50プロジェクトぐらいを並行して進めています。

 イギリスの「AstraZeneca」社との契約が一番最初で、2008年からスタートしています。メジャーなところでは、アメリカの「Bristol-Myers Squibb」社、「Amgen」も有名だと思います。スイスの「NOVARTIS」社、これは私の前職です。そしてUKの「GlaxoSmithKline」社、最近ではアメリカの「Merck」社、フランスの「Sanofi」社、「帝人ファーマ」などが私たちのクライアントです。

 今現在は12社ですが、この先数年で20社ぐらいに増えると思います。将来的に多くの新薬が我々のプロジェクトから生まれると考えています。

創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)とは

 この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)という技術は、がん、アルツハイマー、マラリア、最近だとエボラ、インフルエンザなど病気の種類を問いません。どんな治療領域でもアプローチできて、リミットがない、これが非常に大事なポイントです。

 実際、私たちがどんなターゲットを狙っているかというと、これはクライアント(共同研究先)との話し合いになります。ある会社は抗がん剤、ある会社はインフルエンザ、またはアルツハイマー、と皆ばらばらです。集約するとほぼ全ての治療領域をカバーできています。

これまで狙えなかったターゲットも視野に

 現在市場に出回っている薬は、口から飲む経口薬と血管等に直接入れる注射剤の2つに大きくカテゴライズされています。私たちのペプチドは、その2つの良いところを取り悪いところを隠して、全体をカバーすることができるというのが特徴です。

 つまり、これまでターゲットにできなかったような疾患もターゲットにできるということで、とても注目されています。

今までにない技術

 製薬会社はたくさんあるのに、新薬は全世界で毎年2~3つぐらいしか上市されません。時代とともに新薬が作られ続け、最近では簡単な薬はあらかたできてしまい、市場に存在しています。だから、だんだんと難しいターゲットに移っていくわけです。例えばアルツハイマーや、肝炎をはじめとした肝臓病の完治などです。

 このような創薬に向けて、薬の素となる化合物を見つけ出し最適化していく新しい技術が必要とされています。どの製薬会社も今そこに苦しんでいます。私たちの技術はそこに新しい光を射すことができます。今まで見つけられなかった化合物を見つけ、今までできなかったような最適化ができます。

経済効果と社会貢献

 私たちの試算では、創薬にかかるコストは従来の10分の1になり得ると考えています。少なく見積もっても5分の1、8分の1という数字は視野に入っています。

 良い薬を、安く早く、困っている患者に届けることが社業を通じたメインの社会貢献になると考えています。薬を手に入れられない貧困層には無料で薬を提供できる、それも最終的には視野に入ると思います。

挑戦

 日本では厚生労働省、アメリカでは米食品医薬品局(FDA)での審査において、このような新しいカテゴリーの薬をどうとらえるかというところが鍵になります。

 きちんと認識されて、その薬に合った形で臨床試験や審査を行ってもらえれば時間をロスしませんし、患者さんに安い薬を早く届けられると考えています。

 どちらかというと科学的なところに問題があるのではなく、最終的に人に届くまでの、私たちではコントロールできない部分、つまり承認審査がスムーズにいくことが重要になると考えています。

 このような新しい技術を当局が早く理解できる環境を作らないといけない。私たちの会社はそれを率先してやっていかなければいけないと思っています。

 今後多くの会社が、私たちの技術を活用して発見したペプチドをベースにした新薬を上市しようとしたときに、同じ問題で引っかかる可能性があります。だから、私たちが、エディケーションという形で、早めに厚生省やFDAに働きかけて、コンセンサスを得ておくことがとても大事だと考えています。

キング スカイフロントへ進出、価値ある出会いに期待

 ペプチドリームは、東京大学の菅裕明教授の技術がベースになっており、先生と連絡がつきやすい東京近辺に研究所を構える必要がありました。また、首都圏にいるメリットはアクセスのよさです。特に海外とのやり取りが多く、行き来もたくさんあります。羽田空港、もしくは成田空港に近く、国内ならば新幹線移動もあるので品川とか東京に近いというのが大前提ですね。

 特区という形で国からのサポートを潤沢に受けている、とても魅力的なエリアというのも決め手になって、最終的にはキング スカイフロントでお世話になろうと決めました。

 キング スカイフロントにいろいろな会社が集まってくる中で、将来的にお互いがコラボレーションをすること、つながりを作ることで盛り上がっていくのではないかと思います。キング スカイフロントは、様々な分野のトップ企業や日本の英知が集まった場所になると思います。ランチを食べに行くだけで、価値ある出会いが期待される場所です。

 集積だけでなく、各々がうまく交差することで、今まで考えられなかったようなことが生まれてくるだろうと感じています。研究拠点を構える場所として最高だと考えています。