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Vol.12,May 2018

瀬尾学氏

株式会社リコー 研究開発本部 リコー未来技術研究所 ヘルスケア研究センター バイオメディカル研究室 室長

リコーインタビュー

経緯

今、リコーでは、新しい成長戦略を考えています。
我々は、今まではオフィスでプリンターやコピーを提供してきたんですけれども、プリント技術を色々な所に展開して、新しい顧客価値を提供していこうということを目指しております。

その中の1つとして、我々の今ここ(スカイフロント)でやっているバイオプリンティング技術というものを開発しています。これは、今まで長いこと我々がリコーの中で開発して来たインクジェットの技術がベースになっております。このインクジェットの技術をベースとして、このバイオプリンティング技術を開発しています。

ヘルスケアの分野、バイオメディカルの分野は社会的な意義が非常に高いところだと、我々も考えておりまして、リコーとしても非常に取り組む価値があり、新しい領域に出ていくチャンスだというふうに捉えて、研究開発活動をここで行っております。

目的

今、この、バイオプリンティング装置を開発していますが、その大きなきっかけの 1つが、iPS細胞の樹立です。iPS細胞が作られて、そこから色々な細胞を作る技術が出てきました。これが、再生医療や創薬に応用されていることが非常に強く期待されている状況だと思っています。

色々な細胞ができるようになりましたが、ここから組織に近いものを作るところには、もう1つのハードルがあると思っていて、色々な細胞を組み合わせて組織を作っていくというところを、バイオプリンティングという技術を使って達成したい、というのが我々の研究の目的です。

方法と展開

我々インクジェットの技術を持っていましたので、最初にインクジェットの技術を使いまして細胞を吐出してパターンニング(patterning)していこう、と考えました。

実際に、従来我々が開発してきた産業用のインクジェットの技術を使って細胞を吐出してみたんですが、 細胞が死んでしまったり、ノズルや流路に詰まってしまったり、という問題が発生して、

新しく細胞吐出に適したインクジェットヘッドを開発しています。これは非常にシンプルな構成をしており、液室がなく、ノズルプレートを振動させることによって細胞懸濁液を吐出させる、という構造になっています。このようにして、細胞が安定して吐出できるようになった、というのがこれまでの我々の成果です。

もう1つは、3次元的に細胞を組み合わせて、3次元的な構造を作る、という必要があるんですが、これに関して、ハイドロゲルと言われる固定材料と細胞を、それぞれインクジェット飛ばして、3次元的なものを作っていく、ということをしています。このハイドロゲルにも、いくつか難しさがあります。インクジェットで吐出できて、しかも造形性が良いもので、アルギン酸という細胞に毒性のない材料があります。

これは、非常に優れた特性は持っているのですが、一方で細胞に対して接着性が悪いという問題があります。この問題を解決するために、我々は、ゼラチンの微粒子をインクに混ぜて、ハイドロゲルの中にゼラチン微粒子が混ざっていることで細胞が接着できて、ちゃんと3次元的な造形もできる、という技術を開発してきました。

このようなインクジェットを吐出する技術と、3次元的に造形する技術という2つを組み合わせて、薬の評価や再生医療に使えるような3次元的な組織を複数種類の細胞を使って構築していくということを目指しています。

キングスカイフロントへの期待

我々は、このバイオプリンティングの技術を2014年ごろに開始しました。当初は、大学とも一緒に共同研究を行なっていましたが、弊社の研究所の中でスタートしておりました。

やはり細胞を扱うですとか、最先端の医療やバイオの技術の情報というものがどうしても必要になってきました。それは、弊社の研究所の中にいても、なかなか最先端の情報が得られないため、2016年に、このライフイノベーションセンターに移動してきました。

よって、我々がキングスカイフロント地区に非常に期待していることの1つとしては、最先端の技術が、ここに居ることで得られる、ということが1つ、また、同じような最先端の技術を持った企業、研究機関、大学と共同で、再生医療や創薬のような夢をかなえていくということがもう1つの大きな目標です。

こういった中で、若手の技術者もいろいろな交流を得ることができてどんどん育つ、ということが我々が非常に期待していることです。

この地域は、羽田空港のすぐそばで、国際的にも色々なやり取りをしやすいという、非常に大きなメリットがあると思っています。

我々の行なっている研究というものは、やはり日本の中だけに閉じるものではなくて、色々な外国等の企業研究機関とつきあいながらやる必要がありますし、できればやはり我々のものをどんどん出していきたいので、このような地域のメリットを活かしていけるであろうと思っています。

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