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Vol.7,July 2016

武林亨氏

慶應義塾大学 大学院健康マネジメント研究科委員長 教授 医学博士

私の研究分野

私は医学部を卒業して医師の免許を取得後ずっとパブリックヘルスの研究をしています。パブリックヘルスは非常に多様な分野を含んでいます。例えば働いている人たちの健康を守る、環境と人の健康との関係を調べる、などです。

最近の例では、PM2.5という大気汚染が、人の健康にどのように影響するかを調べたり、地域に住んでいる人たちの健康について調べています。

昨今の予防は個別化していて、人の個別の体質や状況に合わせた予防を考えることが大きなトレンドになっています。私自身は網羅的に人の健康情報を把握する最先端の技術と融合した新しいコホート(cohort)研究を始めています。これにより、将来的には個別の予防を目指す研究を行っています。

日本で一番多い死因は癌。そして脳卒中、心疾患、いわゆるノン・コミュニカルブル・ディジーズ。まずそこがターゲットです。背景にある、例えば糖尿病のような代謝が変化する疾患はどの国でもターゲットとなっています。川崎での研究は、まずこの分野へのアプローチをメインにしています。

メタボリックスのコホート研究は、日本は山形県の鶴岡市が最大の拠点になっています。ここで始めたコホートは、これからイギリスのインペリアルカレッジにある同様のセンターと連携をして、協働あるいは国際規格等の研究に発展させるよう進めています。

大学と川崎市のつながり

この殿町という場所の将来性、国際性は誰もが認めているところです。実は慶應は川崎市とは、これまで様々な形で一緒に協働して来ました。ひとつは川崎にある2つの市立病院。ずっと歴史的に慶應の医師たちが現場で臨床の技術を提供してきました。もうひとつは、川崎市と慶応義塾は研究教育に関して最先端のことを一緒にやっていくという協定を組んでいます。この殿町という将来性のある地域で、私たちも一緒にこの地域を発展させる、という位置づけでこの4月1日にキャンパスを作りました。

リサーチコンプレックス推進事業

産業界、大学、研究機関そして自治体、それぞれのプレイヤーが地域に集まって地域の発展のための場作りをしていく。そういう場作りのための事業を、リサーチコンプレックス推進事業と呼んでいます。

すでに色々な機関が集積している殿町に、1つ欠けていたものとして教育機関、すなわち大学の存在があります。私たちがここにキャンパスを置くことで、さらなる地域の発展を加速化させたいと思っています。まずは短期的な目標として、リサーチコンプレックス推進事業の中で、殿町には「とがった先端的なプレイヤー」が居ますから、そこに慶應も加わり、さらに横に繫がって発展する仕組みを作ることが、今1番の大きな目標です。

大規模情報、データサイエンスとヘルスケアの人材の拠点

大規模な情報を集める拠点を作るということ、 健康、医療、介護に関する情報を、個人情報の保護を前提にしながらできるだけ多くの情報を殿町に集積させること、情報基盤の整備を第1に考えています。

2つ目の役割は人材育成。来年度からはヘルスケアの領域に特化させた、仮に「殿町EDGE」と呼んでいますが、ヘルスケアの分野でイノベーションを生むような人材の講座を始めます。

それにあわせてデータサイエンスの専門の人材を育てる、あるいは少し角度を変えて、若い医師たちがこの地域に来て、様々な研究やトレーニングを受けられる仕組みを作る、これまで以上に大学生、大学院生から若い研究者、若い実践家までがこのキャンパスに集まるような人材育成の仕掛けを作ること、この2つが大きな我々の役割と考えています。

国際的な人材育成の場

この地区の良いところは、単に大学だけがあるわけではないところです。若い人材たちはラボの中に入っていく、企業の人と接点を持つことによって、自分のキャリアを自分で設計する機会が早く与えられます。殿町という地区全体が人を育てる場所になると期待し、それによって新しいキャリアを作ってくれると思っています。

1つ1つのプロジェクトも、国際性を持って計画しています。情報基盤については、今世界中が情報化を進めています。実際エストニアとは既に情報をどう活用するか、人々の健康に役立てるプロジェクトを一緒に出来ないか、ということを始めています。

私たちが新たに始めようとしているロボティクス、ロボットスーツを用いた脊髄損傷の患者さんのリハビリテーションのプログラムは、成功すれば間違いなく世界中から患者さんたちが来ます。すると、それを学ぶために、若いドクターたちも来ます。このように、1つ1つのプロジェクトが国際的な位置づけを持つ、という前提で計画を進めています。

環境と場作り

1番大事なのは、研究室にこもっているだけでは駄目だ、ということ。これからは分野を超えて研究者が自由につながり、自由に行き来し、意見を交わすということがより大事になっていきます。それが可能な場作り、環境づくりが、大変重要だと思いますが、どうしても建物1つ1つが孤立している状況です。

今から4〜5年の間にすべての建物がそろったとき、中に研究者が篭ることなく、外に出て自分の研究を話すところから、新しいアイディアや新しいものが生まれます。そのような街としての環境づくりが大切です。例えば、川があって飛行機も見えます。さらに緑があり、少し気持ちを開放できるような場が揃えば本当にすばらしい場所になると思います。

将来国際化を目指すとなると日本人だけが集まるわけではありません。海外から一緒に来る人たちが子供を育てる環境、日本に来てよかったと思える環境とセットでないと人は長く居られません。将来に向けた大きな計画の中で、川崎市を中心として皆で作り上げていかないといけないものかな、と思います。この殿町は都心に近いところにあって国際的なアクセスも良い。その中でどうやってイノベーションを生むような街づくりをするかという、大切なモデルになると思います。

タウンキャンパス

タウンキャンパスは、大学が大学として閉じこもらないための仕掛けです。名前が示すように各地域のその場所にある自治体、研究機関、企業、リソースと一緒に、新しい研究と開発、教育を進めるための仕掛けです。

殿町にタウンキャンパスを置いたのは、慶應大学が単に大学という枠に閉じこもらずに新しいことを地域のみなさんと作っていく仕掛けです。

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