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Vol.3,March 2015

幹細胞技術の進歩:研究の最前線

近年、再生医療および疾患モデリングにおける幹細胞技術の使用に注目が集まっている。とりわけ2006年に誕生した人工多能性幹細胞(iPS細胞)(遺伝子導入法を用いて、成熟した成人細胞を多能性状態へと再プログラムした細胞)により、発生学は一変した。今回、iPS細胞研究の先駆者である京都大学の山中伸弥教授と慶應大学の岡野栄之教授が、iPS細胞技術の最新動向を検討した1

成熟し、分化した細胞を初期の多能性状態へと戻すことが可能になったことで、細胞を再プログラムし、複雑な疾患を治療するための医療技術開発に向けた可能性が開かれた。患者の細胞を使ってiPS細胞を作製できるため、治療に対する拒絶反応が起こりにくく、また、ドナー由来のiPS細胞にも期待が持てる。

現在、中枢神経系疾患の研究に向けたiPS細胞技術が中心となっている。山中教授と岡野教授は、霊長類およびマウスを対象としたそれぞれの神経幹細胞移植研究において、脊髄損傷後の運動機能回復に成功している。両教授は、京都大学が作製した臨床用iPS細胞を用いた脊髄損傷患者のiPS細胞治療を計画している。また、脳卒中および多発性硬化症治療への応用についても研究を進める予定である。

疾患特異的iPS細胞が作製され、アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとするさまざまな神経系疾患モデルの作製に使用されている。iPS細胞に基づくモデルで疾患の進行を解明することで、これらの疾患に有効な「遺伝子修復」療法が生まれる可能性がある。

山中教授と岡野教授は、iPS細胞技術の安全かつ効果的な使用に向けて、今後、慎重かつ系統的に研究を進めるよう呼びかけている。重要な課題として、晩期発症型疾患をより正確にモデル化するための加齢表現型の作製、ゲノム編集法の研究、および神経疾患リスクが高い人に対する先制的治療の開発がある。

  1. Hideyuki Okano1* and Shinya Yamanaka2*iPS cell technologies: significance and
    applications to CNS regeneration and disease. Molecular Brain 7 (22) (2014)
  1. Department of Physiology, Keio University School of Medicine, 35 Shinanomachi, Shinjuku-ku, Tokyo 160-8582, Japan
  2. Center for iPS Cell Research & Application, Kyoto University, 53 Kawaharacho, Shogoin, Sakyoku, Kyoto 606-8507, Japan

*corresponding authors, e-mail address: hidokano@a2.keio.jp ;yamanaka@cira.kyoto-u.ac.jp

Figure:

キャプション:京都大学および慶應大学の人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究の世界的権威は、 中枢神経系疾患の治療におけるiPS細胞技術の多大なる可能性を説く。

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