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Vol.4,June 2015

医療応用を目指したmRNAキャリアの化学構造の精密設計

メッセンジャーRNA(mRNA)は次世代核酸医薬の有力候補として注目を集めている。しかし、mRNAは生体内では容易に分解されてしまうため、標的細胞へと安全かつ効率的に送達することは極めて難しい。

ポリカチオンとmRNAのポリイオン複合体(ポリプレックスと呼ばれる)は、mRNAを安定に保持でき、標的細胞への送達途中でmRNAが分解されるのを防ぐことによって、細胞取り込みを高めることができるため、mRNA送達キャリアとして盛んに研究されている。mRNAを送達する能力は、ポリカチオンの化学構造を精密設計することで大幅に向上させることができる。したがって、ポリカチオンの化学構造の最適化がmRNA送達に重要といえる。

東京大学の片岡一則教授らは、ポリカチオン(ポリアスパルタミド)側鎖のアミノエチレンユニット繰り返し数の違いがmRNAポリプレックスの有効性に及ぼす影響を検討した。同繰り返し数が偶数(PA-E)および奇数(PA-O)のポリアスパルタミドを設計し、それぞれのポリアスパルタミドでmRNA導入を試みた。その結果、奇数回の繰り返し数を持つPA-Oは偶数回の繰り返し数をもつPA-EよりもmRNAを持続的に発現させられることを見出した1

さらに片岡教授のチームは、PA-Oの優れたmRNA導入能のメカニズムを探ったところ、PA-Oはエンドソームから細胞質への移行能は低いが、細胞質内での安定性が極めて高いことが明らかとなった。これは、DNAの核酸医薬の送達に最適の構造はPA-Eであることが示された同チームの以前の研究結果とは対照的であり、分解されづらいPA-O内包mRNAは発現が長時間持続するため、mRNAによる効率的な治療用タンパク質の発現に有効であることが示された。

どのような核酸を運ぶかに応じて、ポリプレックスの化学構造設計を十分吟味することが、核酸医薬の臨床応用の実現には重要であると片岡教授らは結論づけた。

Reference and affiliations

  1. 1. Hirokuni Uchida,† Keiji Itaka,† Takahiro Nomoto,‡ Takehiko Ishii,‡ Tomoya Suma,∥ Masaru Ikegami,† Kanjiro Miyata,† Makoto Oba,⊥ Nobuhiro Nishiyama,# and Kazunori Kataoka*,†,‡,§. Modulated protonation of side chain aminoethylene repeats in N substituted polyaspartamides promotes mRNA transfection. The Journal of the American Chemical Society 136 (2014)
    †Center for Disease Biology and Integrative Medicine, Graduate School of Medicine, ‡Department of Bioengineering, Graduate School of Engineering, and §Department of Materials Engineering, Graduate School of Engineering, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo, Tokyo 113-8656, Japan

    ∥Department of Chemical and Biomolecular Engineering, The University of Melbourne, Victoria 3010, Australia

    ⊥Graduate School of Biomedical Sciences, Nagasaki University, 1-14 Bunkyo-machi, Nagasaki 852-8521, Japan

    #Polymer Chemistry Division, Chemical Resources Laboratory, Tokyo Institute of Technology, R1-11, 4529 Nagatsuta, Midori-ku, Yokohama 226-8503, Japan

*corresponding author email address: kataoka@bmw.t.u-tokyo.ac.jp

Figure:

側鎖のアミノエチレン構造の繰り返し数が 奇数のポリアスパルタミドから作成したポリプレックスは mRNAを標的細胞へと効率的に運ぶ能力を発揮する。
奇数のポリプレックス(PA-O)は、 偶数のポリプレックス(PA-E)と比べて細胞質内で安定であるため、 mRNAの発現が持続することが明らかとなった。

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