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メープルシロップエキスは高脂肪食に起因する肝臓の炎症を緩和する

サトウカエデ(Acer saccarum)の樹液を濃縮したメープルシロップは、精糖に代わる甘味料として世界中で使われている。抗酸化などの有益な作用を持つ成分の源として、メープルシロップに注目が集まり始めている。

神奈川科学技術アカデミーの阿部啓子博士らは、東京の研究者らと共同で、高脂肪飼料摂取マウスを対象に、メープルシロップエキス(MSX)投与が肝臓の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。その結果、高脂肪食に起因する肝臓の炎症を抑制する可能性が見いだされた。

阿部博士らのチームは、ラットを対象とした過去の研究において、メープルシロップが肝臓におけるアンモニアの生成を抑えることで肝機能を高め、保護する可能性があることを報告した。今回の試験で、研究者らはニュートリゲノミクスと呼ばれる手法を用いて、マウス肝臓における遺伝子の発現変化を網羅的に解析した。マウスは通常脂肪食群、高脂肪食群、および高脂肪食+MSX群に分けられ、8週間にわたり、それぞれの飼料が与えられた。

阿部博士らのチームは、これら3群における遺伝子発現の変化を解析した。高脂肪食を摂取することで発現変動する遺伝子のうち、MSXを摂取することでその変化が通常食を摂取した場合と同様になるもの、すなわち高脂肪食摂取の影響が改善されたものに着目した。その結果、脂質代謝および炎症応答に関連する遺伝子が多く含まれていることが明らかになった。研究者らは、高脂肪食摂取に起因するマウス肝臓の炎症をMSXを摂取することで緩和する可能性があると結論している。

本研究は、ケベック州農業・漁業・食品省(MAPAQ)およびケベック・メープル製品生産者協会(FPAQ)による「セクター開発への分野別開発戦略コンポーネント1」、並びに総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」、並びに地域イノベーション戦略支援プログラムによって実施されました。

Reference and affiliations

Asuka Kamei1, Yuki Watanabe1, Fumika Shinozaki1, Akihito Yasuoka1, Takashi Kondo1, Tomoko Ishijima2, Tsudoi Toyoda2, Soichi Arai1,3 & Keiko Abe1,2 (2015): Administration of a maple syrup extract to mitigate their hepatic inflammation induced by a high-fat diet: a transcriptome analysis. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (published online 18 May 2015)


DOI:10.1080/09168451.2015.1042833

  1. Project on Health and Anti-aging, Kanagawa Academy of Science and Technology, Kawasaki, Japan;
  2. Graduate School of Agricultural and Life Science, The University of Tokyo, Tokyo, Japan;
  3. General Research Institute, Tokyo University of Agriculture, Tokyo, Japan

*corresponding author email address: fp-kamei@newkast.or.jp

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神奈川科学技術アカデミーの研究者らにより、高脂肪飼料摂取マウスにメープルシロップエキスを投与することで、肝臓の炎症を軽減できるエビデンスが示された。

画像提供:ケベック・メープル製品生産者協会