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バイオプリンティング技術でDNA分子数を1個単位で制御

DNA分子が所定の数だけ入った標準物質が遺伝子検査の精度向上を実現

遺伝子検査に広く用いられる高感度な手法であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、増幅によりDNA分子1個レベルから検出できることが報告されており、遺伝子組換え食品、がん、および感染症などの検査に用いられている。このような検査では、検査対象となる特定のDNA配列(ターゲット遺伝子)を確実に捉えることが重要であり、検査機関には、検査機器、試薬および検出方法の適正な精度管理が求められる。

これまでもDNAの種類と濃度が規定された標準物質が、いくつかの企業や研究機関から提供されてきたが、DNA分子数がモル(1モルはDNA分子6.02×1023個に相当)で規定されているため濃度が高い。そのため、分子数100個以下の低濃度での検査で使用するには、通常、標準物質を希釈しなければならない。このような希釈の過程でDNA分子濃度に誤差が生じるため、一桁レベルのDNA分子数を要する場合、サンプルにDNA分子が規定以上入る、あるいはまったく入らない場合がある。

今回、株式会社リコー、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)ならびに日本製粉グループの株式会社ファスマックが共同で、バイオプリンティング技術を用いて、DNA分子の絶対数を1個単位で制御できるDNA標準物質の製造に成功した。同標準物質は、遺伝子検査装置および試薬の精度管理に使用できる。

今回開発されたDNA標準物質の新たな製造方法により、遺伝子組換え食品やがん、感染症の検査など、特定のDNAを検出する遺伝子検査に適した標準物質の製造が可能となった。新しいDNA標準物質により、検査の信頼性が向上するであろう。

Reference
Presented at the Bio International Convention in Boston, USA (June 4-7th, 2018) and Biotech in Tokyo, Japan (June 27-29th 2018).

Figure:

(図中キャプション)
遺伝子組換え
遺伝子組換えにより細胞内に特定のターゲットDNA配列を導入

精密細胞分注
液室 ノズルプレート ノズル 曲げ素子
吐出細胞数をカウントしながらインクジェットにより分注

DNA標準プレート
96ウェルプレート
細胞を破壊してDNAを抽出
特定配列のDNAが数個レベルで入った標準物質を製造

図1:標準物質の製造に向けて開発された新しいプロセスの概要。遺伝子組換えにより細胞内にターゲット配列を挿入し、ターゲット配列を含むDNA数をカウントする。

お問い合わせ先

株式会社リコー 広報室
koho@ricoh.co.jp

農研機構食品研究部門 広報プランナー
kohop-nfri@ml.affrc.go.jp

日本製粉株式会社 広報部
f-kamei@nippn.co.jp

株式会社ファスマック バイオ研究支援事業部
public-relations@fasmac.co.jp